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横浜地方裁判所川崎支部 昭和62年(わ)254号 判決 1987年11月18日

主文

被告人を罰金六万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は韓国国籍を有する外国人で神奈川県川崎市川崎区池上町《番地省略》所在のA荘二〇一号に居住しているものであるが

第一  昭和六〇年五月九日、同市川崎区鋼管通二丁目三番七号所在の川崎区役所田島支所において、前記居住地の区の長である川崎区長に対し外国人登録法七条一項に基づく登録証明書の再交付申請をするに際し、外国人登録原票、外国人登録証明書及び指紋原紙に指紋の押なつをしなかった

第二  昭和六一年六月一一日、同支所において、同区長に対し同法七条一項に基づく登録証明書の再交付申請をするに際し、外国人登録原票、外国人登録証明書及び指紋原紙に指紋の押なつをしなかった

ものである。

(証拠の標目)《省略》

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも外国人登録法一八条一項八号、一四条一項に該当するところ各所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を罰金六万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。

(量刑の理由)

本件は、判示のとおり、二回にわたる外国人登録証明書等に対する指紋押なつ拒否の事案であり、右事犯につき略式命令により罰金一〇万円に処せられたものであるところ、本件の罪質及び態様並びに現行の該当法定刑等に照らすと、右略式命令発令当時においては、右量刑は不相当でなかったものと思料される。しかしながら、右発令後外国人登録法は、外国人登録証明書の再交付申請をするに当たり、被告人のように以前に指紋の押なつをしたことのある者については一定の事由がある場合を除き原則として再度の指紋押なつを必要としない旨改正され(昭和六二年法律第一〇二号)、右改正法は未だ施行されていないものの、右改正法の趣旨及び右改正の経緯等に鑑みれば、本件については、主文掲記の罰金額にとどめるのが相当であると思料する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 達修)

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